不安障害とは?不安障害の中にSADは含まれている!

不安障害PTSD,パニック障害,全般性不安障害,広場恐怖,強迫性障害,限局性恐怖症

不安障害とは?不安障害の中にSADは含まれている

今回はSADではなく、
不安障害Anxiety(不安) Disorder(障害)のお話です。
※障害名を多用します

不安障害に含まれる病気の一つの中に、SADがあるので、
こちらも合わせてご紹介したほうがいいかなと思いました。

実際に使わない知識でも、知っているのと知らないのとでは天と地ほどの差がありますからね。

例えば社交の場に限らず、自宅でバスに乗っているのを想像しているだけで不安になるとか、職場に行くことが不安で不安でたまらないとか、そういった気持ちが強くなるのであれば、SADでもあり、不安障害でもありますよね。

職場や友人に障害名を説明するときに、「社交不安障害なんだよね」というよりも、
総括して「不安障害なんだよね」といったほうが、わかりやすいですし、相手の受け取り方も異なる場合もあります。

一人で苦しまずに、言葉や単語をうまく使って、周囲に自分の状態をしっかり説明できるようにしましょう。

 

不安障害に分類される病気₁₎

  1. パニック障害
    ある日突然、強い不安や恐怖とともに、動悸や冷や汗、呼吸困難などの症状に襲われる病気。
    パニック発作と呼ばれる症状はいつ起こるかわからないため、日常生活に様々な支障をきたします。
  2. 広場恐怖
    公共の交通機関や雑踏、公共の場など逃げ出せない場所やすぐに助けを求めるのが困難な場所が恐怖に感じ、避けるようになる。
  3. 限局性恐怖症
    高所や閉所、暗所、ヘビやクモ、乗り物などの特定の対象や状況を極度に恐れる。
  4. 強迫性障害
    戸締りや火の元を何度確認しても心配でならないなど、自分でも不合理だとわかっていることを自分の意志に反して繰り返し行ってしまう。
  5. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
    悲惨な体験や恐怖体験によって心に深い傷を負った後、そのときの不安や恐怖がよみがえり平静でいられなくなる。
  6. 全般性不安障害
    ある不安が終わると、次の不安が始まるといった感じで、常に漠然とした不安を抱えている。不眠や頭痛などの身体症状をともなう。

この不安障害の中に、更にSADが含まれます。

どうでしょうか?思い当たることはありますか?

この中だと、私は限局性障害と軽い強迫性障害、パニック障害がありますね。
「障害」は重々しい響きですので、私はそこまで重篤なものではないかもしれませんが。

思い当たる方も、恐怖とまではいかなくても、なんとなくそんな気分になることもある…
という方もいるのではないでしょうか。

もしかすると、予備軍なのかもしれないですね。

以下で、不安障害の詳細をお伝えします。

 

不安障害の各疾病の特徴と症状

上記で簡単に説明した通り、不安障害には様々な症状があります。

SADも不安障害に分類されます。ご自身の症状と照らし合わせて自分が不安障害の〇〇症に当てはまることを知るだけでも、今後の治療方針に役立つと思います。

恐らく病院に行っても、「不安障害」「SAD」としか診断されていない方もいることでしょう。

あるいは、具体的に「パニック障害」とか「〇〇恐怖症」と診断があり、パニック障害は不安障害のひとつだと知っている方が少ないかもしれませんね。

漠然と”不安”障害”社交不安”障害と理解するのではなく、掘り下げてみてくださいね。

限局性恐怖症とは?特定の物や場所を異常に恐れる

限局性恐怖症の恐怖の対象となるもの

  • 動物や虫(蛇や犬、ネズミ、クモ、カラス、ハト、ナメクジ、ゴキブリなど)
  • 自然環境(水や地震、崖、台風、強風など)
  • 状況(電車、バス、飛行機、トンネル、橋、高層ビル、エレベーター、閉所など)
  • 血液・注射・外傷(注射針、自分や他人の出血や怪我、治療行為など)
  • その他(嘔吐に繋がりそうな状況、騒音、着ぐるみなど)

上記のように、特定の動物や虫、場所などの環境を異常に恐れることがあれば限局性恐怖症です。
症状が強いと過呼吸や心拍数増加を起こし、日常生活に大きな影響を及ぼします。
症状の軽減を図ろうとして、恐怖の対象を避けて行動するクセがつきます。
そのため、仕事・学業などで大きな問題を引き起こすこともあります。

社交不安障害とは??評価や批判を異常に恐れ身体に支障もきたす

社交不安障害とはどんな症状?:

  • 人と接するのが怖い(対人恐怖)
  • 人前で話すのが怖い(スピーチ恐怖)
  • 電話に出るのが怖い(電話恐怖)
  • 人前で字を書くのが怖い(書痙)
  • 人前での食事が怖い(会食恐怖)
  • 人の視線が怖い(視線恐怖)
  • 人前で顔が赤くなって恥ずかしい(赤面恐怖)

上記のように、不安や恐怖の対象が、他人や周囲からの評価や批判などです。
これらが多少苦手…といった方もいるでしょうが、不安や恐怖という”気持ち”から、”身体への何らかの症状”(動悸や発汗、震え、赤面、各所の痛みなど)に繋がれば、社交不安障害といえます。
結果、限局性恐怖症と同様に症状がでる場面を避けて行動するため、生活に大きな支障を来たします。

別記事に詳細がありますので参照してくださいね。

強迫性障害とは??強迫観念と強迫行為

強迫性障害とはどんな症状?:

強迫観念にとらわれ、強迫行為を繰り返す病気。

強迫観念…自分の意志とは反して、何度も同じイメージを繰り返してしまう

  • 汚れていないドアノブが汚く感じる
  • 前髪が左右対称でないことが気になる
  • 縁起の良さを気にする
  • 戸締りが気になる

強迫行為…強迫観念を打ち消すための行動を、せずにはいられない行為

  • 何度も何度も手を洗う
  • 左右対称を求めて髪を切りすぎる
  • 縁起の良い数字か、その倍数でなければ気が済まない
  • 何度も戸締りを確認する

上記のように強迫観念と強迫行為がある状態を強迫性障害といいます。
強迫観念が強まれば、強迫行為にかかる時間や回数も増えます。
また、強迫観念や強迫行為を恐れるようになり、それらを避けるように行動することで生活に支障が出ます。

大きな支障としては、これらを他者に強要することです。
家の人にルールとして強要し、”巻き込み症状”としてエスカレートすることもあります。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)と急性ストレス障害とは?トラウマとなる出来事が関係!

PTSD・急性ストレス障害とはどんな症状?:

トラウマとなる出来事(命に関わる危険なことや辛い出来事)を体験した場合に引き起こされる症状。

➤侵入症状…トラウマとなった出来事を再体験(フラッシュバック)してしまう

  • トラウマ体験のイメージや記憶がよみがえる
  • トラウマ体験や関連した悪夢を見る
  • 発汗や緊張、動悸などの身体症状がでる

回避・麻痺症状…トラウマと関連する場所や行動、思考などを回避してしまう

  • 感情を鈍化させ、幸福や愛情が感じられなくなることもある
  • トラウマ体験を一切考えない、話さない
  • トラウマ体験を部分的あるいはすべて思い出せない
  • 孤立感が増す

過覚醒症状…精神的な緊張が高まることでの様々な症状がでてしまう

  • 警戒心が強くなり、眠れない、怒りっぽい、集中力の低下などの症状がでることもある

これらの症状が1カ月以上続き、日常生活に支障を来たしている場合はPTSDといいます。
これらの症状が1カ月未満で、日常生活に支障を来たしている場合は急性ストレス障害といいます。

全般性不安障害とは?漠然としたよくわからない不安感にさいなまれる

全般性不安障害とはどんな症状?:

一つの不安は持続せず、一つ終わればまた一つと次々と不安の対象が変わる。

  • 家族や健康の安全
  • 仕事でミスをしないか
  • 今月家計は足りるか
  • 人間関係はうまくいっているか
    (子供が悪い友人と付き合っていないか。職場や近所で悪口を言われていないか)

上記のように、次から次へと不安になり不安が尽きることがありません。自分でも不安が漠然としていて
無性に涙が出るなど、よくわからない不安感にさいなまれます
このような不安感によって、以下のような症状が起きます。

➤精神的症状

  • 緊張、集中力低下、焦燥感、イライラ、離人感(自分が身体や精神から切り離されているように感じる)、非現実感

➤身体的症状

  • 頭痛、肩こり、震え、倦怠感、めまい、息苦しさ、不眠、下痢や便秘、頻尿

パニック障害が不安障害の中心症状

パニック障害は不安障害のひとつですが、実は中心症状と言われています。

パニック障害とはどんな症状?:

ある日突然パニック発作と呼ばれる激しい発作に襲われる。

  • 急な強い不安感や動悸・息切れ
  • めまい
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 冷や汗
  • 手足のしびれ
  • 離人感
  • 現実感消失

不安感や恐怖を自分で抑制できないため、「気がおかしくなる」「何かとんでもないことをしてしまうのではないか」
と更なる不安感を覚えます。

一見、自律神経障害などとも似ていますね。

特に離人感や現実感消失というもの、これもやっかいですよね。パニック障害でなくとも不安障害全般で起きやすいものですが、自分がそこにいないような、いてもなぜ動いているのか、どうやって生きているのかわからないような…そんな感覚に陥ります。

私にも経験があります。少し系統が違うかもしれませんが、

観覧車に乗った時に、急に観覧車が壊れたり観覧車から落ちたりする光景が脳裏に繰り返しよぎり、激しい動悸と息切れ、全身の硬直がありました。

自分は全般性不安障害でもあり、限局性恐怖症でもあり、パニック発作でもあるんだろうなと思っています。

不安障害は未診断で潜在的患者も多い

実は日本内の不安障害の推定患者数は、約1000万人以上ともいわれています。
これは、うつ病やうつ状態の患者数を上回る数字となっています。
ですが、不安障害は未診断の方も多く実質の数がわからないのが現状です。

精神障害者の疾患別患者数の割合に関しては、今後記事をまとめる予定ですのでお待ちくださいね。

厚労省の発表によると、何らかの不安障害を有するものの数は生涯有病率で9.2%(12ヶ月有病率では5.5%)だそうです。
10人に一人は障害を持っているということになりますね。₁₎

潜在的に症状を持っているけれど、それが表立ってないか、あるいは出ていても気づいていないのでしょう。

内訳としては、特定の恐怖症が最も多く3.4%、次いで全般性不安障害1.8%、PTSD1.4%、パニック障害0.8%です。₁₎

アメリカの調査では、日本より数値が高くて10人に3人は不安障害を発症するみたいです。
更に、女性の有病率が2倍程度高いです。

男女の診断の違いにはこのような理由があります。

point
  • 女性は生理などもあり心身が不安定になりやすく、不安を不安と感じやすい傾向にあるため、受診率も高い。
  • 男性は不安感を覚えると、それがイライラ感や攻撃性といった感情に変化する傾向にあるため、不安によるものと気づかない。

その他には、男性は女性よりもプライドが高く、精神障害ではという疑問を恥ずかしいと感じる傾向もあるから…といったことも考えられますね。

また、不安感は誰にでも起こりうることで、ちょっとしたことで感じることでもあります。
転職や引っ越し、結婚や出産などで簡単に起こります。

そのため、不安を病的なものと結び付けて判断するのが難しいということもあるんですね。

 

発症の原因には環境要因と器質的要因がある!セロトニンが関係?

発症の原因は明確には不明ですが、
主な原因は脳機能の不具合によるものだといわれています。

脳内の偏桃体と呼ばれる部分からでるはずの神経物質が、不足することで脳機能の不具合が引き起こされると言われています。

神経伝達物質の中でも、セロトニン(幸福ホルモン)が不足することで不安感が強まることがわかっています。
このあたりの神経生理学的な部分は、また機会がありましたらご説明したいと思います。

 

環境要因

ADは、環境要因の要素がとても大きな要因となります。

環境が要因となるのは、以下のようなものがあります。

  • 家族や親しい人との別れ
  • 引っ越しや結婚、就職など、人生の転機となること
  • 虐待や暴力
  • 親の不在による孤独
  • 貧困
  • 人前での大きな失敗体験、恐怖体験

このように、多くのことがADを発症してしまうきっかけとなります。

特に引っ越しや結婚、就職などは、多くの方が思い当たるのではないでしょうか。
就職に関しては、アルバイトも含めるとほとんどの方が対象だと思います。

就職したばかりの時は、緊張して食欲がなくなったり、疲労感を覚えたり、胃腸障害がでたりなど…
病気じゃなくても、こういった症状がでることがありますよね。

 

気質的(器質的)要因

気質的な要因がある人とは、

例えば、引っ込み思案、内気、臆病などといった特徴は不安障害の基本となる不安体質であると考えられます。また、自分の感情をうまくコントロールできない人、ストレスへの対処が下手な人、否定的な感情や劣等感が強い人なども不安障害には多く見られます。₁₎

とのことです。

私もストレスへの対処が苦手で、否定的な感情にはとても弱いです。
繰り返し何度も失敗したことや言われたことを考え続けてしまう傾向にあります。
幼少期は、もっとわがままでむしろ人を思いやらないタイプのズケズケ物事を言う人間だったのですが…

育っていく過程で、それだと人を傷つける、周りから人がいなくなる…
と感じることがあり少しずつ改善していったみたいです。
丸くなったとでもいうのでしょうか。

幼少期のままだと人を傷つけるタイプだったけど、大人になると不安感が強く逆に自分が傷ついてしまう…ん~どっちも嫌ですね!!!笑

でも強いていうならば、誰かを傷つけるより自分が傷ついたほうがいいのかなぁ・・・。

いや…それも嫌ですね笑

やはり、どちらも傷がつかないように自分の感情を受け入れつつ自己受容しながら相手への思いやりも忘れないことが大切でしょうか。


あ、そういえば自己受容って、例えば人と会話できない自分をあきらめて受け入れるということじゃあありませんからね!


自己受容についての詳しいことは次回以降の記事で書いていきたいと思います。

 

 

不安障害に似た症状や不安を呈する疾患は複数ある

不安障害は”不安”を主とする症状ですが、それ以外にも不安感が強くなる疾患はあります。

例えば、うつ病、統合失調症、適応障害です。
私は適応障害の診断が下りたこともあるので、よくわかります。

また、これらの疾患と不安障害を併発することもよくあります。


不安障害は重症化してうつ病になることもありますし、適応障害は明確なストレスにより不安感が増大しますが、ストレスが軽減すると不安感も減弱することが多いです。

統合失調症は少し系統が異なり、幻覚や妄想・幻聴により、強い被害妄想を伴い、不安や恐怖の対象が非現実的でないものとなります。例えば、体中に虫が這っているとか、誰かに命を狙われているというようなことです。

不安障害の不安や恐怖は、事故にあうかもとか、他人に批判されるかもとか現実的なものなので、そこが大きな違いですね。

 

今回のまとめ

今回は、不安障害に関してのお話をさせていただきましたが、いかがでしたか?

簡単なまとめとしては、不安障害には

▪️ 社交不安障害(SAD)
▪️ パニック障害
▪️ 広場恐怖
▪️ 限局性恐怖症
▪️ 強迫性障害
▪️ PTSD
▪️ 全般性不安障害

などがあります。
不安障害に似たその他疾患もありますが、不安障害は現実的な不安感、その他の疾患は非現実的な不安感となります。


また、社交不安障害の認知度は低いですが、不安障害なら言葉でわかる方も多いです。

また、「障害」という単語が嫌であれば、「不安症」と表現しても周囲の方はわかりやすいかもしれませんね。

うまく言葉を活用して、自分が過ごしやすい環境を自分で作っていけるといいですよね。

それでは、ここまで読んでいただいてありがとうございました。


⚫引用・参照文献

1)引用:厚生労働省,https://www.mhlw.go.jp/

▪️引用参照:福西勇夫,R1.9.20,ウルトラ図解不安障害・パニック,株式会社 法研